建設業界の変革 事業拡大の新たな戦略

建設業界の変革:最新M&A動向と成功事例の徹底解説 | 事業拡大の新たな戦略

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近年、建設業界のM&Aが増加傾向にあり、多くの関心を集めているのは確かです。他の業界でM&Aが一般的な事態となっている一方で、建設業界はさまざまな理由からこれまでM&Aの導入が積極的には進んでいませんでした。 ですが、時代が進化するにつれ、M&Aの重要性がより認識され、今では多くの企業がその利点を活用しているのが現状です。

本記事では、建設業界のM&Aの特性を探求し、今後のトレンドや注目すべき事例について詳しく解説します。

M&Aとは

M&Aは、「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の略称です。このアプローチは多くの形を取り、企業統合や企業の事業や株の買収を目的とした事業譲渡や株式譲渡が含まれます。これらのどの手法も、企業の拡大や経営戦略の一環として効果的に活用されます。さらに、M&Aは単に合併や買収に限定されるものではなく、業務提携や資本提携を通じて企業間の協力関係を築くことも目指します。

建設業界におけるM&Aの動向 

以前、建設業界においてM&Aはあまり頻繁に用いられる戦略ではありませんでした。地域に根ざしたビジネスモデルが主流であったため、他の地域の建設会社を買収し、新しい市場で事業を展開するという考え方が少なかったのです。

加えて、建設業界のプロジェクトが多岐にわたるため、大規模プロジェクトは一社だけで運営するのが困難な側面もありました。この結果、業界内での幅広い連携が強調され、異なる強みを持つ地域企業が相互に協力して事業を推進していたのです。

しかし、最近のトレンドは変わりつつあり、建設業界でのM&Aが増えてきています。この増加は、建設業界における需要の拡大や、都市部へ、または郊外への事業拡大を目指す企業がM&Aを利用していることに起因しています。これが、建設業界におけるM&Aが高い関心を集めている理由です。

建設業界におけるM&Aの重要性 

M&A活動は建設業界の動向と強く連動しており、その影響は多岐にわたります。例えば、2021年に行われた東京オリンピックは建設需要を刺激し、これが建設業界におけるM&Aの増加を引き起こしました。

この他にも、事業承継の簡略化という側面でM&Aの重要性が増しており、多くの経営者が企業の将来戦略としてM&Aに注目しています。特に、建設業界は人手不足が慢性的な課題となっているため、M&Aを通じた人材の補充は大きな利点として捉えられています。

このような背景から、企業が事業規模の拡大と持続可能な経営を実現するための手段として、M&Aの活用がますます注目されているのです。

建設業界におけるM&Aのメリット 

建設業界では、M&Aを成功させることで多くのメリットが生じます。 以下、具体的なメリットについて詳しく解説いたします。

後継者問題の緩和

建設業界は慢性的な人手不足の影響を受け、後継者問題が深刻な状態にあります。現在、多くの大企業では世襲制を避けており、親族外からの後継者選出が必要となっています。 

M&Aの成功は、第三者へのスムーズな事業継承を可能にし、後継者問題の有効な解消策として注目されています。

雇用安定への寄与 

建設業界は、新型コロナウイルスの拡大防止策などによって利益率が低下し、多くの企業が存続を危ぶむ状況にあります。この状況が、雇用確保の緊急課題となっています。 

成功したM&Aは事業の持続を支援し、それが従業員の雇用安定につながります。雇用契約は企業と従業員間で結ばれるため、M&Aが成立しても経営者が変わったとしても、事業は続行され、雇用契約も保持されます。これにより、M&Aは従業員の雇用の安定に貢献します。

売却益の実現 

建設業界だけでなく、基本的に企業が廃業を決めるときには、事業用資産の売却や処分に関連する費用が発生します。これが原因で、経営者が手元に残せる資産がほんのわずかになることも珍しくありません。 

退職金制度が未構築であったり、経営者が雇用保険に加入していない場合が一般的であり、このような理由から廃業後の資産管理が必要となります。

M&Aを活用することで、企業を第三者へ売却する選択肢が生まれ、売却から得られる利益が期待できます。この売却益は経営者の新たな資産となり、廃業後の資産形成に有用であると言えます。 

効率化の拡大

M&Aの一環として合併を選択する場合、企業規模が大きくなるのは避けられません。この規模拡大は、建設業で必要とされる原材料の安定供給や、グループ企業間での重機利用の効率化をもたらします。

特に原材料調達面では、既存の調達ルートを統合することで、より安定した供給体制を構築できます。さらに、原材料の価格についても、複数のルートを比較することで、コスト削減が図れます。アスファルトやコンクリートの調達も、合併企業が自社プラントを持っている場合、より簡単に行えます。

また、建設業界においては、様々な重機が不可欠です。自社で重機を保有していない企業は高額なリース契約を結ぶ必要がありますが、合併を通じて他社と協力すると、パートナー企業が保有している重機を利用できるようになる可能性があります。これにより、リースの限定的な利用期間や高額な料金といった問題を緩和できます。

結果として、企業間の合併により、スケールメリットが拡大し、多方面にわたる効率化が達成できるのです。

建設業界の最新M&A事例3選

建設業界では数々のM&Aが成功を収めており、その例は枚挙にいとまがありません。以下では、建設業界の最新M&A事例3選をご紹介します。

1.オリエンタル白石と山木工業ホールディングスの統合 

OSJBホールディングスの子会社であるオリエンタル白石は、2020年12月25日の取締役会で、山木工業ホールディングスの株式を取得し、それを孫会社化することを決定しました。

オリエンタル白石は東京に本社を構える企業で、様々な分野で事業を展開しています。特にプレストレストコンクリートの製造販売やニューマチックケーソンの建設工事、橋梁の補修・補強工事などがその主な事業領域です。

その一方で、山木工業ホールディングスは福島県いわき市を拠点に、港湾や土木工事で著名な実績を持っています。

この統合の背景には、オリエンタル白石の東北地域における事業基盤強化と港湾関連事業への新規進出の意図があります。既に仙台市、森岡市、福島市に事業拠点を持つ同社が、今回いわき市への進出を図るのは、未開拓の地域への拡大を意味します。M&Aを活用することで、新エリアでの事業安定化へのスピードが格段に向上すると期待されます。

加えて、両社の得意分野の相補性がビジネスの拡大を促します。オリエンタル白石は橋梁関連工事に強みを持ち、山木工業ホールディングスは港湾関連工事に長けています。これらは建設業界における関連領域であり、オリエンタル白石が港湾工事のノウハウを取り入れることで、事業拡大の新たなチャンスが開かれると言えるでしょう。 

2.アートフォースジャパンと塚本工務店の統合

売り手としての塚本工務店は、神奈川県小田原市で土木工事や建築修繕工事、リフォーム事業を展開していましたが、株の継承や後継者不在が課題となっていました。

一方、買い手であるアートフォースジャパン(旧アートクレーン)は、静岡県伊東市で地盤調査や地盤保証、地盤改良工事を手掛けていました。

このM&Aは異なる業種間での取引というわけではなく、両社はそれぞれ土木建築と地盤関連事業の専門家として知られていました。土木建築工事で地盤が軟弱な場合、アートフォースジャパンの地盤改良技術が求められるため、事業の相互補完が可能となります。

また、塚本工務店は多くの公共工事を受注している実績があります。公共工事の受注が少なくなる第一四半期などには、アートフォースジャパンが手がける民間工事の進行がスムーズに行える協力関係を築くことが可能です。

この統合により、業務の補完が期待できるだけでなく、株の継承問題や後継者不在といった課題も解消できる有効な方法となったと言えます。

3.鹿島建設子会社がシンガポール企業を買収

2022年3月、鹿島建設の子会社、カジマ・デベロップメントは、シンガポールのセントラル・キャピタル・ホールディングスの全株式を取得し、その企業を子会社化しました。

鹿島建設は、建設と建築事業を核とし、多岐にわたる事業展開を行っているゼネコン業界の大手企業として知られています。その子会社であるカジマ・デベロップメントは、シンガポールを拠点に、アジア地域の開発プロジェクトを統括しています。

一方で、セントラル・キャピタル・ホールディングスは、シンガポールの中心ビジネスエリアに位置するオフィスビルを所有し、ビルのレンタルおよび管理事業を展開している企業です。

この買収を通じて、鹿島建設は収益性と不動産価値の向上を目指し、さらには高い希少価値を持つオフィスビルの取得にも成功しました。

まとめ

ここまで、建設業界のM&Aの現状と最新の事例をご紹介しました。時代の変化に伴い、建設業界でのM&Aは増加しているのが見て取れます。これは、業界固有の様々な課題を効果的に解決する重要な手法として利用されているからです。

成功したM&Aは企業間の結束を生み出し、大規模な利益拡大が期待できます。本記事が、建設業界におけるM&Aの検討を進めている方々の一助となれば幸いです。

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